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11話 浴衣と、募りゆく想い

Author: みみっく
last update Last Updated: 2025-09-01 16:55:34

♢放課後の教室と僅かな変化

 夏期講習の授業が終わり、教師が退出すると、教室は途端に開放的な雰囲気に包まれた。悠真は、隣のひよりがゆっくりと立ち上がるのを見つめた。彼女のブラウスの裾が、椅子の背にわずかに引っかかり、その拍子に白い肌がちらりと覗く。その瞬間、悠真の心臓が再び大きく跳ねた。

「風間くん、今日の講習、お疲れ様」

 ひよりが、少しはにかんだように悠真に声をかけた。その淡いピンク色の瞳は、夕焼けの光を受けて、どこか儚げに見える。

「あ、ああ、ひよりもお疲れ」

 悠真は、精一杯平静を保とうとするが、声が上ずってしまう。彼の視線は、無意識にひよりの胸元へと向かう。ブラウスのわずかな隙間から見える鎖骨のラインが、彼を強く惹きつけた。

「ねぇ、この問題、教えてくれないかな……?」

 ひよりが、手元の問題集を悠真の方へ差し出した。彼女の指先が、問題の行をそっと辿っている。その指先は細く、白い。悠真の視線は、問題集にではなく、その指先へと吸い寄せられた。彼の掌が、昼間に触れたひよりの柔らかな感触を思い出して、じんわりと熱くなる。

「あ……うん、いいよ」

 悠真は、自分の動揺を悟られないよう、努めて落ち着いた声で答えた。ひよりが、悠真の机のすぐ横に、少し身をかがめて問題を覗き込む。彼女の甘い香りが、より一層強く悠真を包み込んだ。その距離は、彼にとって耐え難いほど近かった。悠真は、彼女の髪の毛が、自分の頬に触れるか触れないかの距離にあることに気づき、息を詰めた。

 その時、教室の扉が勢いよく開いた。

「あれー? まだいたの、二人とも!」

 花城まどかの元気な声が、教室中に響き渡る。彼女の後ろには、結城凛音と白鷺千代も立っていた。まどかの明るい視線が、悠真とひよりの距離を捉え、ニヤリと意味ありげな笑みを浮かべた。その笑顔は、悠真にとって、甘くも鋭い刃のように感じられた。

「まどかちゃん! もう!」

 ひよりが、慌てて悠真から身を離した。その頬は、夕焼けの色よりも鮮やかに染まっている。悠真は、その瞬間に失われた温もりに、胸の奥で痛みを覚えた。

 まどかの登場により、教室の空気は一変した。悠真は、自分の内に秘めた衝動が、誰かに見透かされているのではないかという不安と、もう少しひよりのそばにいたかったという残念な気持ちが入り混じり、複雑な表情を浮かべた。夏期講習の終わりは、彼にとって、ひよりとの特別な時間の終わりを意味しているようだった。

♢夏祭りの計画

 翌日も夏期講習は続いたが、昨日ほどの密着した時間は訪れなかった。まどかたちがいる前では、ひよりも悠真も、どこかよそよそしく振る舞ってしまう。昼休みになり、弁当を広げていると、まどかが突然、手を叩いた。

「ねーねー、みんな! 夏休みといえば、やっぱりお祭りっしょ!」

 まどかの唐突な提案に、ひよりが目を輝かせる。

「お祭り! いいですね、まどかちゃん!」

「うん、そうだね。屋台とか、花火とか……」

 千代も優しい声で同意した。凛音は無言でサンドイッチを食べていたが、その表情は少しだけ和らいでいるように見えた。悠真は、ひよりの嬉しそうな顔を見て、胸の奥がキュンとなった。彼女と一緒にお祭りに行けるなら、どんなに楽しいだろう。

「んじゃ、決まり! 来週末の横浜花火大会、みんなで行こっ!」

 まどかの提案に、悠真の心臓は再び大きく跳ねた。横浜の花火大会は、毎年多くの人で賑わう。浴衣姿のひよりを想像すると、彼の全身に熱が宿る。特に、人混みの中で、偶然体が触れ合う瞬間を想像してしまい、股間がじわりと熱を帯びた。

「あの……私、浴衣、着ていってもいいかな?」

 ひよりが、少し恥ずかしそうに尋ねた。その言葉に、悠真は思わず息を呑んだ。浴衣姿のひより。想像するだけで、彼の理性は吹き飛びそうになる。白い襟足、うなじ、そして、浴衣の薄い生地の下に隠された柔らかな曲線。

「もちろん! ていうか、ひよりちゃんは絶対浴衣でしょ!ね、悠真くん!」

 まどかが、悠真に同意を求めるように視線を向けた。悠真は、顔が熱くなるのを感じながら、精一杯の笑顔で頷いた。

「……うん、似合うと思う」

 そう答えるのがやっとだった。彼の声は、自分でも驚くほど震えていた。その言葉を聞いて、ひよりはさらに頬を赤く染め、俯いてしまった。

 まどかは、悠真の動揺に気づいたように、またしてもニヤリと意味ありげな笑みを浮かべた。凛音は、ちらりと悠真を見やり、何も言わずにサンドイッチを一口食べる。千代は、微笑ましそうにひよりを見つめていた。

 放課後、悠真は一人、下駄箱へと向かっていた。心の中は、来週末の花火大会への期待と、抑えきれないひよりへの衝動でいっぱいだった。夏の暑さも、彼の心の熱に拍車をかけているようだった。浴衣姿のひより。その残像が、彼の脳裏から離れない。

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